2008 Fiscal Year Annual Research Report
プライバシー権概念の再定式化;権利概念を構成する自律と関係性の観念
Project/Area Number |
20730008
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
野崎 亜紀子 Hiroshima City University, 国際学部, 准教授 (50382370)
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Keywords | プライバシー権 / 関係性 / 自由 / 自律 / リベラリズム / 正義 |
Research Abstract |
本研究の初年度に当たる平成20年度は、研究遂行に際しての基盤を形成する期間であった。文献他資料の収集と検討を行うことに多くの研究時間を割き、プライバシー権概念を構成する観念としての「関係性」について、その位置づけの理論化という本研究全体の研究ビジョンの具体的イメージを獲得することとなった。初年度に於いては、報告および論文公表に至るまでの段階には至らなかったが、次年度における報告、論文執筆の準備を得ることができたといえる。このことは、収集した文献等の検討のみならず、法理学研究会および東京法哲学研究会、法哲学会、法社会学会、医学哲学倫理学会、生命倫理学会他、各種研究会等への参会の中で交わされた議論からも、大きくの知見を得たことは言うまでもない。リベラリズム法学の基幹概念と考えられてきた「自由」「自律」の観念に「関係性」の観念が内包しているという本研究の基本的発想は、これまで共同体主義との親和性が指摘され、その概念の曖昧さと帰結の危険性が指摘されてきた。しかしながら近時、実践上の喫緊の課題として浮上する医科学上の法・政策の方向性を把握するに当たり、例えば臓器移植におけるドナーや、終末期医療における終末を迎える主体である個人の、その存在をめぐり、周辺に在る人々 (関係当事者) の法的存在感が増していることが、各種専門家等によって作られた研究報告書等の中に散見される。関係性を規範概念として位置づける必要性が、まさに喫緊の課題であることを認識することとなった。
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