2009 Fiscal Year Annual Research Report
民刑分離の原則に関する法哲学的研究―プライヴァタイゼーションの可能性
Project/Area Number |
20730009
|
Research Institution | Nagasaki Institute of Applied Science |
Principal Investigator |
橋本 祐子 Kyushu Sangyo University, 国際文化学部, 准教授 (80379495)
|
Keywords | 法哲学 / 現代正義論 / 司法の市場化 / 民刑分離の原則 / リバタリアニズム |
Research Abstract |
本研究は、司法制度の市場化や制裁としての損害賠償の重視といった、司法制度のプライヴァタイゼーションを主張するリバタリアニズムの法構想を手がかりにして、民事と刑事の峻別を説く民刑分離の原則に関して法哲学的研究を行い、民事と刑事の融合の可能性について考究することを目的とする。本研究におけるプライヴァタイゼーションとは、「司法の市場化」と「私法原理の重視」の二つを意味しているが、研究実施期間2年目(最終年度)である本年度は、まず「私法原理の重視」に着目し、なぜ損害賠償ではなく国家による刑罰の賦課でなければならないのかという問いを立て、国家刑罰権の正当性について考察を行い、民刑分離の原則の捉え直しを試みた。国家刑罰権の正当性について検討した成果の一部を、書評論文として発表した。 また、司法制度のプライヴァタイゼーションの可能性を検討する際に根本的な問題として提起されるのは、私的制裁はなぜ認められないのかという問題である。私的制裁には、刑罰という公権制裁に吸収することのできないものが残されており、それがまさに国家刑罰権の正当性に疑問を呈するものであることを、「復讐と刑罰」で論じた。 さらに、司法制度の市場化という意味でのプライヴァタイゼーションが、厳罰化などを求めるポピユリズム刑事政策という現象と密接に関係していることに着目し、刑罰制度の実践を左右する要因に関して考察を行い、その成果を論文や研究会報告として発表した。
|