2010 Fiscal Year Annual Research Report
フランスならびにイタリアにおける国家の非宗教性原則の運用と文化の多様性
Project/Area Number |
20730011
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
江原 勝行 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (60318714)
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Keywords | フランス / イタリア / 国家の非宗教性 / 共和主義 |
Research Abstract |
2010年度においては,フランス並びにイタリアにおける失業・移民問題等を背景とした社会的排除の現象を基本的人権論の観点から是正するための理論を探究するという視点から,フランス並びにイタリアにおける国家の非宗教性原則と現代社会における文化的多様性との関係につき研究を行い,関連文献の収集・検討等に基づき,以下の考察上の成果を得ることができた。フランスについては,2004年に公教育において生徒に対し宗教的標章の着用を禁止する法律,2010年に公共空間において特に信仰上の理由に基づき自己の容貌を隠蔽することを禁止する法律が制定されたことにより,フランス流の共和主義の根幹を成す国家の非宗教性原則をさらに堅持する姿勢をフランス政府が打ち出したことが確認された。特に,国家の非宗教性原則のそれらの立法化に関し,かかる立法政策をもって,寛容の理念を内包した国家の非宗教性原則の概念を創出する外観は用意されたが,公役務の中立性や公序の維持の名の下に文化的マイノリティ集団による基本的自由への権利要求を疎外する機能を果たす平等原則の固守が図られた,というフランス社会の現状が摘出された。イタリアについては,欧州連合レベルにおける基本権保護に対しイタリア共和国憲法が有する特質を提示するという見地に基づき,宗教的多元主義を始めとする憲法上の基本原則の意義を明らかにした。この作業を出発点として,国家の非宗教性原則を具体化する共和国憲法規範の解釈・運用につき調査を行い,イタリアの憲法判例並びに憲法学説においては,諸個人による信教の自由の行使を公共空間において容認するという点で,国家の非宗教性原則を信教活動に関する諸個人積極的自由と不可分のものとして構成する傾向が認められるという,当該原則の母国たるフランスとの比較法研究上の対照が導出された。
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