2008 Fiscal Year Annual Research Report
行政法学における民主主義原理の位置づけ-住民自治の観点から
Project/Area Number |
20730012
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
飯島 淳子 Tohoku University, 大学院・法学研究科, 准教授 (00372285)
|
Keywords | 公法学 / 行政法 / 地方自治法 / 公私協働 |
Research Abstract |
平成20年度は、専ら、フランス法に関する理論研究を行った。 まず、地方分権・地方自治の法構造という大きな文脈への位置付けを介して、地域民主主義の意義を探究した。すなわち、伝統的法構造を抜本的に変革しようとする近時の改革は、個人への着目から地域への着目へという視点の移動を試みているが、そのなかで、地域民主主義の概念・諸制度は、近代的個人-平等原則-法律のドグマというシェーマと緊張関係に立ちつつ、国レベルの代表民主主義を刷新する可能性を秘めている。これは、近代法原理を根本から揺るがしうるものであるが、ただし、地域民主主義は、近代と現代のバランスのなかで、意味づけられているものでもある。地域民主主義を一要素とする参加民主主義の概念は、フランスにおいてもポレミックとなっており、また、日本法のそれとは異なる面をも持つことから、その分析はきわめて高い重要性を有している。 また、公私協働に関して、しばしばドイツ法の議論が参照されるなか、フランス法の議論を検討し、その特質ないし本質を浮き彫りにすることを試みた。フランス法は、伝統的に、私的主体による公共的活動を積極的に位置づけてきたが、そこでは、公役務理論の枠組みが採用され、かつ、契約手法が重要な役割を果たしている。さらに、近時においては、公私協働契約の導入に加え、EU法の強い影響の下、行政判例の"現代的"な展開も見られる。フランス法が、いかにして公共性と私人の自主性とのバランスをとろうとしてきたか、そして、現在ではそこにいかなる変化が認められるかを明らかにし、本研究課題にとって、一つの有益な視座を得ることができた。
|