2009 Fiscal Year Annual Research Report
行政法学における民主主義原理の位置づけー住民自治の観点から
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20730012
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
飯島 淳子 Tohoku University, 大学院・法学研究科, 准教授 (00372285)
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Keywords | 地方分権・地方自治 / 契約化 / フランス法 |
Research Abstract |
本研究は、フランスを比較対象国として選択しつつ、行政法学の主たる対象とされるべき地方自治の観点から、伝統的に自由主義原理により強く規定されてきた行政法学における民主主義原理の位置づけを追究することを目的としたものであるが、この課題に対し、本年度は、契約化の側面からのアプローチを行った。 わが国においては、伝統的に、行政行為論に圧倒的比重が置かれ、行政契約法理の未発達が問題視されてきたが、近時、PFIや市場化テストの導入により、契約手法への注目が高まっている。この点に関し、フランス法は、きわめて有益な示唆を与えてくれる。フランスにおいては、確固とした行政契約法理を踏まえた上で、1970年代以降、公法人・私人間のみならず、公法人相互間、公法人内部においても、行政活動全般にわたり、契約手法が著しい発展を見せている。この契約化は、形式的には、複数化した主体間の交渉・調整のための手段として、実質的には、効率化(効率化には、市場化と近接化の二要素がありうる)という価値を実現する手段として、原理的には、国家および国家以外の主体の正統性を新たに根拠づける手段として、様々な次元における国家の再定位の試みを意味するものであると考えられる。行政法学にとどまらず、民法学・行政学等をも通じて、もっともアクチュアルなテーマの一つである契約化に関し、既に学問的蓄積のあるドイツ法ではなく、日独とは異なる法構造をもつフランス法の分析を行い、アクチュアルであるが故の曖昧さに対して、一つの相対的視座を提供することができた。
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