2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730014
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
太田 匡彦 The University of Tokyo, 大学院・法学政治学研究科, 准教授 (80251437)
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Keywords | 行政法 / 社会保障法 / 地方自治 / 公的扶助 / ホームレス / 最低生活保障 |
Research Abstract |
本年度(2009年度)の前半は、昨年度(2008年度)の研究を続行し、公園にテントを設置して居住しているホームレスの住所を公園に認めることの評価、そのテントを行政代執行によって除却することの可否について、研究を深めた。そして後者の問題については、公園区画の占拠と占有の成否、明渡義務と除却義務という二つの観念の背後にある理解といった観点からの分析を踏まえて一つの結論を得て、それを「明渡しか、除却か--『占有』と『事実上の排他的支配』の間に立つ大阪地裁第2民事部」と題する論文として公表した。結論は、一定の条件を満たすホームレスについては、それが居住するテントの設置区画に対する占有の成立を認め、ホームレスは(義務を負うとした場合には)当該区画の明渡義務を負うと考えるべきである、したがって代替的作為義務である除却義務を負っていると構成し、その義務履行を行政代執行によって実現する手法は違法と考えるべきであるというものである(詳しくは論文を参照されたい)。もっとも、これはホームレスが義務を負う場合に、どのような義務を負うか、その考察に我々がホームレスを主体として扱い続けているかが顕わになるという観点からの考察であり、その限りのものである。これに対して、ある人がホームレスであるとして、その人を個人(主体)として同定し認識する局面に関わる住所の問題の考察は、概ねまとまったものの、最高裁判決がすでに出たこともあり、どのような形の論文として公表するか思案中である(最高裁判決に鑑みて、単なる判例評釈ではあまり意味がないように思われる)。さらに昨年度後半は、ホームレス問題を解決する諸政策の提案を分析、評価する前提問題として、政策のあり方を法学の観点から分析・評価するための枠組みとしていかなるものが適切かという問題にも取組み、これは現在も続行中である。
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