2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730014
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
太田 匡彦 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (80251437)
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Keywords | 行政法 / 社会保障 / 警察 / 最低生活保障 / 社会連帯 / ホームレス |
Research Abstract |
本年度は、最低生活保障の必要性と社会保障制度全体での位置づけとを今一度明らかにするために、社会保障をその前提をなす政治との関係、社会保障の基盤を提供する連帯(社会連帯)とその他の連帯(政治を基礎づける連帯や市場を基礎づける連帯)との相互関係、これらの関係の中で社会保障を制度化する際に法はいかなる点を決定しなくてはならないか、またその際の要請は何かを考え、論文にまとめた(2011年5月出版予定)。次いで、これも踏まえて、改めて最低生活保障のための社会保障制度として中心的な役割を担う生活保護制度に考察を向け、その老齢加算減額・廃止に関する判例評釈を公表した。同時に、ドイツにおける求職者生活保障(いわゆるArbeitslosengeld II)・社会扶助に関する連邦憲法裁判所の違憲判決とその後の立法者の対応を研究すると共に、警察法に基づくホームレスに対する住居割り当ての研究を行った。ドイツに関する研究成果を公表するには至らなかったものの、前者に関しては、最低生活保障として何を保障するのかに係る根深い対立を明らかにできた。2012年度中に論文としてまとめたい。後者については、社会保障の観点から分析したものの、警察法上の問題として、この権限が緊急状態義務(Notstandspflicht)の一適用例として位置づけられており、その観念そのものが日本法には断片的にしか存さず、また別の問題局面に混ぜ込まれて論じられているため、緊急事態という観念、警察という行政作用そのものに関する根本的な比較研究を行って基本から考え直す必要が存在すること、それなしにホームレス対策として切り離して考えてもおそらく意味がないことが明らかになった。研究の視野をホームレス対策だけでなく、警察作用そのものに拡げて今後も研究を続行する以外なかろう。
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