2009 Fiscal Year Annual Research Report
行政情報をめぐる公権力の諸相とその法的コントロール
Project/Area Number |
20730017
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
稲葉 一将 Nagoya University, 大学院・法学研究科, 准教授 (50334991)
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Keywords | 行政法 / 知る権利 / 情報公開 / 会議公開 / 政府関係法人 / 情報提供 / 情報と文書 / 電子化 |
Research Abstract |
今年度は、アメリカにおける連邦法および州法の各種資料の収集やアメリカの大学関係者に対するメールでのやりとりなどを通じて、公開請求の対象となるべき行政情報の概念を分析した。アメリカにおいても行政情報の存在形式、つまり情報の保有主体や記録媒体、の概念が存在しないわけではないが、これらは行政情報の対象性の判断における一つの要素であるにすぎない。むしろ国民の知る権利の行使の対象となるべき行政情報の概念については、立法による形式性の具備とともに司法による柔軟な実質判断が行われている。このような法構造が、彼の地における情報公開法の発展を可能にしてきたと評することもできる。 わが国の情報公開法制のありようを考えるうえで、次の二点が重要であろう。第一に、電子的情報公開が法制度にもたらす発展についてである。例えば、電子メールが情報公開法の行政文書に該当するのであれば、この場合の公開対象情報は職員間の会話を含むものと考えられる。同様に、電話での会話や会議などの行政情報も公開対象情報となるはずであって、これらを対象とする法制度の不十分さが浮かび上がる。第二に、いわゆる私人が情報公開請求の対象法人となるのか否かについての州法の裁判例において、政府と私人との関係(出資・人事・監督)が一考慮要素であるにとどまり、私人の活動目的(営利性)や活動内容(伝統的な政府活動該当性)も考慮要素とされている。わが国でも、行政的機能を有する私人は多様に存在しており、国法による全国画一的な対処の限界とともに、司法による個別案件毎の判断余地を残す立法テクニックの可能性が、考慮されてよいと考えられる。
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Research Products
(1 results)