2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730018
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
戸部 真澄 Ritsumeikan University, 法務研究科, 准教授 (60361242)
|
Keywords | 協働 / 協働化 / 環境リスク / リスク規制 |
Research Abstract |
本研究の目的は、現在、日本(及び欧米)において、行政活動の様々な局面で行政(国家)と私人(社会)が密に関係を切り結びながら活動を展開する現象(=協働)が見られることに鑑み、こうした行政活動の「協働化」に対する法的統制のあり方を解明することにある。協働の類型(責任配分型、合意型、参加型)及び法的統制のあり方一般については、既に、拙稿「協働による環境リスクの法的制御(上)(下)」自治研究83巻3号・4号にて、国家責任のあり方や「法律の留保」論に関する一般論を展開したが、本年は、それをさらに環境リスク規制全体の中に位置づけ、単著として公刊する作業に着手した。 また、その前提的考察として、従来の古典的自由主義を基調とした規制システム(典型的には警察規制)が現在の環境リスク規制においてどのような限界に行き当たるのか、そして、その限界が今日の協働化現象にどのように関係しているのかを考察し、論説「不確実性の法的制御・序説」立命館法学321・322号として発表した。概略、古典的自由主義の規制システムは、事象の予見可能性、因果法則の線形性、トライ・アンド・エラーの反復可能性等を前提としており、これは現代の「不確実性」(=事象の複雑性、予見不可能性、動態性等)に満ちた事象を制御するには内在的な限界を抱えていること、他方で、国家の人的・経済的資源の欠乏状況と福祉国家からの撤退不可能性に鑑みれば、国家のみによる独力の規制システムを構築するのも、国家による規制の大胆な緩和も考えられないことが、今日、国家と社会の協働を進展させている背景をなすと分析した。
|