2008 Fiscal Year Annual Research Report
憲法学から見た公益法人制度改革:結社の自由の実効的保障の観点からの検討
Project/Area Number |
20730019
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
井上 武史 Okayama University, 大学院・社会文化科学研究科, 准教授 (40432405)
|
Keywords | 公法学 / 憲法学 / 基本的人権 / 結社の自由 / 非営利団体 / 公益法人 |
Research Abstract |
1. 結社の自由の実効的保障の観点から、今般の公益法人制度改革を検討することが本研究課題の目的であるが、本年度はまず、非営利団体法の当事者である「個人」と「結社」との関係について、フランスの非営利団体法制を比較対象としつつ、結社の自由論の観点から基礎的・原理的な考察を行い、わが国の現行の法制度に分析と検討を加える作業を行った。 2. 本年度の研究で得られた新たな知見は、以下の通りである。第一に、憲法上の結社の自由保障の効果には、個人の「結社からの自由」が含まれるのではないかということである。これは、従来の日本憲法学では必ずしも意識されてこなかった点であるが、憲法が「個人」と「国家」と並び「結社」の存在を承認していること、そして、結社の存在はその構成員たる個人にとって脅威になりうることを考えると、憲法上の「結社の自由」から「結社からの自由」が論理的に導かれるべきである。そして、「結社からの自由」の具体的内容としては、フランス法からの示唆から、結社の団体的拘束からの個人の解放(脱退の自由の法理)、団体自律権の濫用からの構成員の権利利益の保護(統制処分の法理)があることを指摘した。第二に、「結社からの自由」の考え方は、わが国の実定法においても見られることである。脱退の自由の法理および統制処分の法理は、法律・判例を通じて確立されてきており、今般の公益法人制度改革で成立した一般社団・財団法人法でも規定されている。ただ、これらの法理は私人間関係に妥当するものであることから、従来もっぱら私法に属する問題としてとらえられてきたが、「結社からの自由」の問題として憲法学の観点からも検討されるべきことを指摘した。 3. 本年度の成果を踏まえて、次年度は、非営利団体活動を財政的側面から支援する課税制度・補助金制度のあり方を検討し、それらを結社の自由の体系の中に位置づける作業を行いたい。
|
Research Products
(1 results)