2009 Fiscal Year Annual Research Report
憲法学から見た公益法人制度改革:結社の自由の実効的保障の観点からの検討
Project/Area Number |
20730019
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
井上 武史 Okayama University, 大学院・社会文化科学研究科, 准教授 (40432405)
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Keywords | 公法学 / 憲法学 / 基本的人権 / 結社の自由 / 非営利団体 / 公益法人 |
Research Abstract |
1. 結社の自由の実効的保障という観点から公益法人制度改革を検討することが本研究課題の目的であるが、2年目の今年度も初年度と同様、公益法人制度の基礎となる一般的な非営利団体法の基礎理論の構築に向けての検討を行った。具体的には、初年度のフランス非営利団体法研究で得られた知見を日本法にあてはめる作業を行った。 2. フランス法では結社の存在がその構成員たる個人にとって脅威になりうるという問題意識から「結社の自由原理」には「結社からの自由」が論理的に含まれるとされ、その具体的な内容として、結社の団体的拘束から個人の解放を目指す脱退の自由法理と、団体自律権の濫用から構成員の地位や利益の保護を目指す統制処分の法理があることが、明文がないにもかかわらず判例・学説において承認されている。この観点から日本法を見れば、労働組合からの脱退の自由を制限する合意の効力が争われた東芝労働組合小向支部・東芝事件(最2判平成19年2月2日民集61巻1号86頁)において、最高裁は結社の自由との関連を直接には示していないが、理由において「組合の統制への永続的な服従を強いる」と述べた部分は上記の「結社からの自由」の考え方を実質的に示しているのではないかと指摘した。これは、外国法研究から得られた知見から日本法をとらえなおす作業であり、比較法研究のあり方として意義あるものであると考えている。 3. また今年度の後半から、本研究課題の柱である非営利団体への財政支援制度(課税制度・補助金制度)に関する資料の収集と読解を行っており、来年度はそれらを結社の自由の観点から分析する作業を行いたい。
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Research Products
(2 results)