2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730021
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松戸 浩 Osaka City University, 大学院・法学研究科, 准教授 (30292189)
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Keywords | 行政上の実効性確保 / 行政強制 / 行政執行法 / 立法過程 / 司法権の限界 |
Research Abstract |
本年度は先ず、昨年度の課題として残されていた関連法規の制定過程を分析することに重きが置かれた。行政執行法の廃止と行政代執行法の制定に就いては、昨年度に引き続き関連資料の探索収集を行うと共に、本年度はその分析にも力を注いだ。尤も主要な所蔵先である国会図書館のGHQ/SCAP文書は膨大なため、収集が完了したとは未だいいがたいものの、これまで収集した資料によっても、学界未知の事実が明らかとなっている。具体的には上記両法に係る日本側と総司令部当局との交渉過程、民政部をはじめとする総司令部内部での検討、日本側での行政代執行法の制定に向けての動きなどである。これらに就いては従来、ジュリスト増刊「行政強制」における林元法制局長官の、当時立案にかかわった佐藤元法制局長官からの伝聞という形でしか明らかとされておらず、また行政強制研究の第一人者である広岡隆も、上記の過程に就いては公刊史料である国会議事録の参照のみにとどまっていたところである。 総司令部側が問題としていたのは主として適正手続の観点からする官憲による人権侵害の弊害であり、これに対症的に答える形で緒靴強制・即時強制の一般的規定は削除され、必要と認められる場合に個別法の定めるところとなった。この過程では、そのことによる代替的な行政上の義務履行確保の手段にっき十分な検討が加えられていたとはいいがたかった。今日問題となっている司法的執行は、後から学説が履行確保の必要性から提唱したものである。また仮にこれを認めた場合に問題となる請求権の性質についても、学説で議論されていたに留まる。上記の経緯から一般的な直接執行・即時強制が排除された状態で、従前の司法裁判所の権限についての理解がなお存置された結果が2002年最高裁判決であったとする見解は更なる検討が必要であると思われるが、この点も含め速やかに論稿を刊行する予定である。
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Research Products
(1 results)