2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730024
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
木村 草太 Tokyo Metropolitan University, 社会科学研究科(都市教養学部法学系), 准教授 (50361457)
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Keywords | 公法学 |
Research Abstract |
本年は、研究の端緒として、宮沢俊義『憲法の原理』及び樋口陽一『近代立憲主義と現代国家』を読み、併行して大澤真幸『身体の比較社会学』、同『<自由>の条件』『ナショナリズムの由来』にも取り組んだ。10月以降は、収集した文献の分析・読解を進めるとともに、ケルゼンやイェリネックなどの独語文献にも視野を広げた。また、公法学会総会に参加し、知見を広めた。5月以降は、調査中の邑楽町建築家集団訴訟の口頭弁論を傍聴し、実務における代表概念のありようについても調査を進めた。また、邑楽町訴訟の研究の関係で、東北大学の小野田泰明教授の研究室を訪れ、公共建築における議会の役割などについて重要な指摘を頂くことができた。 昨年の研究中には、国籍法違憲判決が下された。これをきっかけに、「国民」の概念について理解を深めることが研究課題に取り組むために有益であることが分かった。このため、この判決の評釈を行うこととし、21年度末から本格的に評釈の準備を始めている。また、代表概念研究のためにフランス憲法学の研究をはじめ、21年度末段階で基本的な教科書類の記述を読解しているところである。 本年度の研究により、(1)国民が代表されるためには国民の概念が成立している必要のあること、(2)代表概念が代表される権力の服従者の感情の慰撫の機能を果たしていること、が理解できた。また、「君が代」伴奏の評釈を行う中で、(3)ナショナリズムと代表概念の研究を主題化すべき必要を指摘できた。従来、代表概念については、理念的な議論が先行し、その社会的機能が不十分にしか理解されていなかった。本研究は、そのことを明らかにする端緒を得ることができ、重要な意義を持つものとなった。また、従来必ずしも論じられてこなかったナショナリズムと代表概念の関係を論じるきっかけをつかむことができた。いずれも、学会に重要な貢献をする研究の端緒となっている。
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Research Products
(1 results)