2008 Fiscal Year Annual Research Report
租税回避と租税徴収に関する情報の非対称性の観点からの研究
Project/Area Number |
20730026
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
渕 圭吾 Gakushuin University, 法学部, 准教授 (90302645)
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Keywords | 租税法 / 情報の経済学 / 租税回避 / 租税徴収 / タックスヘイブン / 外国子会社合算税制 / インセンティブ / タックス・シェルター |
Research Abstract |
本研究は、情報の経済学の成果を利用して、租税回避、租税徴収に関する効率的な制度のあり方を探るものであり、とりわけ、所得を課税標準として課税を行うことで、課税権者である国家が、納税義務者の意思決定に影響を与えていることを重視する。とりわけ、所得の水準が(それが正確に会計帳簿に反映されるかも含めて)納税義務者の意思決定に依存していること、また課税権者は納税義務者の有する情報を観察できないこと(納税義務者としても、会計帳簿という間接的な手段を通してしか所得について証明できないこと)を考慮に入れて制度設計をすべきであるといったことを論じる予定である。 本年度は、経済学の理論が法学にどのように応用できるかを探り、また、資料収集を行うことを目標としていたが、実際には、基礎研究(その成果として、ごく短いものを公表した)にとどまらず、とりわけ租税回避についての応用的な研究を行うことができた。具体的には、財務省財務総合政策研究所や財団法人トラスト60の研究会等において「外国子会社合算税制の意義と機能」というテーマで報告した。これは、外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)が「租税回避防止」のための制度であるといわれるが、それはどういうことなのかということを明らかにする論文である。タックスヘイブンに子会社を作ることが道義的に良いとか悪いという問題ではなく、タックスヘイブンに子会社を作ると(実務家の言う)タックス・コストの面で有利になるという「インセンティブ」に対する「ディスインセンティブ」として外国子会社合算税制をとらえるべきであると主張した(5月刊行予定)。
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