2009 Fiscal Year Annual Research Report
租税回避と租税徴収に関する情報の非対称性の観点からの研究
Project/Area Number |
20730026
|
Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
渕 圭吾 Gakushuin University, 法務研究科, 准教授 (90302645)
|
Keywords | 租税法 / 情報の経済学 / 租税回避 / 租税徴収 / タックスヘイブン / 外国子会社合算税制 / インセンティブ / タックス・シェルター |
Research Abstract |
本研究の2年目・最終年度であったため、研究成果をできるだけ公表することを目標とした。具体的には、まず、外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)が「租税回避防止」のための制度であるといわれるが、それはどういうことなのかということを明らかにする論文を公表することができた。タックスヘイブンに子会社を作ることが道義的に良いとか悪いという問題ではなく、タックスヘイブンに子会社を作ると(実務家の言う)タックス・コストの面で有利になるという「インセンティブ」に対する「ディスインセンティブ」として外国子会社合算税制をとらえるべきであると主張した。また、租税制度を設計するにあたって、課税物件(所得や資産)の帰属が多いに重要であることを踏まえて、アメリカ連邦所得税において、課税物件の帰属がどのように考えられているかということを紹介する論文を執筆し、公表した。「所有権(title)」というような堅い概念ではなく、もう少し柔軟な(占有(possession)概念に近い)ownershipという概念が司法の分野でも租税法の分野でも用いられていることがわかった。さらに、本研究のテーマに完全に対応する内容のアメリカの経済学者たちによる論文の紹介を「国家学会雑誌」に掲載した(刊行は2010年4月)。また、公刊には至っていないが、研究の成果をできるだけ授業でも学生に伝達するように努めた。その一端は、2010年度の授業の受講生に配布した私家版の講義ノートに記した。
|