2008 Fiscal Year Annual Research Report
国際法学における開発問題の再定位-脱植民地化過程における自決権の機能に着目して-
Project/Area Number |
20730031
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
伊藤 一頼 University of Shizuoka, 国際関係学部, 講師 (00405143)
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Keywords | 国際法学 / 開発 / 自決権 / 発展途上国 / ガバナンス |
Research Abstract |
本研究は、発展途上国の開発の問題を国際法において再定位するための視点として、途上国が脱植民地化の過程において自決権の機能により「実効的国家性」を欠いたまま独立を達成しえたことに注目し、かかる実効的国家性の欠如を事後的に補完することに国際法上の開発課題の本質を見出そうとするものである。そこで本年度は、前提的な問題として、多くの途上国が独立達成の時点で十分な国家性を具備していなかったことを、歴史学や地域研究の知見を活用しながら実証的に論証する作業に取り組んだ。その結果、特にアフリカ植民地では、近代主権国家の基礎となる集権的権威の出現を宗主国政府が意図的に抑止し、むしろ在来の分散的な権力構造を温存・強化したこと、そしてその状態のまま独立を迎えたことが明らかになった。本来であれば、かかる状態は「実効的政府の存在」という国家性要件を満たさず国家形成は困難なはずであったが、実は国家性要件自体も絶対不変の基準ではなく、むしろ各時代における支配的な国家観念や正統性認識の状況に応じて変化するものである。本年度の研究ではこの点を、国家承認に関する理論の変遷を通じて跡付け、国家性基準は「事実主義」と「正統主義」の関数として定まるという視点から整理した。これらの作業によって、脱植民地化の過程で自決権が果たした機能を解明するための視座が整ったと考えられるので、次年度は、国連における自決概念の発展を追跡し、特に植民地独立付与宣言及びその履行確保において自決権がいかなる内容の規範として認識されていたかを把握することによって、実効的国家性を欠く状態での国家形成を可能にした法的論理を正確に理解することとしたい。
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Research Products
(2 results)