2009 Fiscal Year Annual Research Report
国際紛争処理における事実審査手続きの法的意義と位置づけに関する研究
Project/Area Number |
20730034
|
Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
岩月 直樹 Rikkyo University, 法学部, 准教授 (50345112)
|
Keywords | 事実審査 / 国際紛争の平和的解決 / 友好的紛争処理 / 国際安全保障 / 事実調査 / 真実和解委員会 |
Research Abstract |
本年度は、前年度の歴史的な検討をふまえ、国連による事実調査手続の利用に焦点をあて、関連資料の収集と検討を行った。収集の対象となる資料は国連から公表されているものが中心であるが、必ずしも入手が容易なものばかりではなかった。そのため、国連資料の調査と共に、そうした資料が作成された経緯や、加盟国の態度に関する資料を得るためにフランス外交文書館における資料調査を行った。同国の外交文書館は2009年にパリ郊外に新設されたものであり、従来の外務省内に設置されていた外交文書館施設よりも資料収集がしやすくなっているものの、レファレンスの不備などもあり、なお継続的に調査が必要な状態にある。 また本年度より、国際紛争処理手続としての事実調査手続に対する比較対照という観点からから、とりわけ民族紛争後の平和構築において用いられるようになっている真実・和解委員会手続きについての検討にも着手した。両者は共に事実調査を目的とするという点では共通するが、その実施方法は相当に異なる。とりわけ、真実・和解委員会手続きが時に当事者からの謝罪を公式に示す場として利用されることによる和解と将来的な共同体の再建に重点を置く傾向があることに対比すると、事実調査手続はその中立性を厳格に維持しようとする傾向が強い。この点は事実調査手続が紛争解決の主導権を当事者自身にほぼそのまま残しながら、しかし適当な解決を促すことに重点を置いていることにもよるとも思われる。その他、両者の対比は事実調査手続の意義を考える上で重要な視点を提供するものであるとおもわれ、この点については継続的な検討を要する。
|