2010 Fiscal Year Annual Research Report
国際紛争処理における事実審査手続きの法的意義と位置づけに関する研究
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20730034
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
岩月 直樹 立教大学, 法学部, 准教授 (50345112)
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Keywords | 事実審査 / 国際紛争の平和的解決 / 友好的紛争処理 / 事実調査 / 国際安全保障 / 真実和解委員会 |
Research Abstract |
本研究の第一の目的は事実審査手続の利用実態の把握であるため、本年度においても引き続き、事実審査の導入とその利用に関する資料の調査収集を継続的に行った。加えて、実務家および海外の研究者との意見交換を行い、実施実態および収集資料の効果的なとりまとめ方、またその適切な評価方法に関する検討を行った。その上で、前年度までに収集した資料とあわせてそれらのデータベース化をはかり、それを基に事実審査手続が今日有する意義についての暫定的な評価を行った。 本研究を通じて得られた資料に基づく事実審査手続の意義に関する本格的な評価は今後の課題であるが、さしあたり次の点を指摘できると思われる。まず1.事実審査手続は紛争当事者から独立した第三者による審査を通じて事実認定の客観性を「擬制」することにより、事実認識をめぐる主観的な非難の応酬を避けることで紛争処理を促進しようとするものであること、またそのために、2.単に国家間紛争のみならず、国内紛争・争乱の悪化をも避けるための利用にも適していることを、その積極的な意義として有する。しかし他方で、3.事実審査を進める上での証拠の収集方法やその評価の方法については、もっぱら事実審査委員会を担う者、またそれらの任命者(国際組織・機関)への信頼・権威によるところが大きく、上記のような積極的な意義を実際に果たすための制度的な保証が欠けていること、また4.とりわけ人権侵害事案のような場合には事実認定と法的評価を厳密に分離することが困難であり、そのために紛争当事者による審査結果の受け入れを困難とする可能性を潜在的に伴ってもいるということも指摘することができよう。 今後は、収集した資料のより詳細な検討を行うとともに、現在も増え続ける審査手続の利用例を継続して調査しつつ、上記の結論の妥当性をさらに検証していくことが求められる。
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