2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730038
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
桑村 裕美子 Tohoku University, 大学院・法学研究科, 准教授 (70376391)
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Keywords | 国家規制 / 労使自治 / 労働者代表 / 労働組合 / 従業員代表 / 柔軟化 / 規制緩和 / 労働者保護法の規制手法 |
Research Abstract |
本研究は、画一的・強行的な国家規制を基盤とする日本の伝統的労働条件決定システムが機能不全に陥っているという問題意識のもとに、実態に即した労働条件決定を誰がどのように実現していくかを検討するものである。特に本研究では、国家規制を労使の集団的合意を通じて緩和する(柔軟化する)場面に注目し、そうした手法の意義やそれを正当化する制度的基盤について独・仏法から示唆を得ることを目指した。平成20年度は、独仏における法規制の柔軟化をめぐる制度の展開を追い、労使の集団的合意を通じた法規制の柔軟化の手法には、労働をめぐる状況変化に迅速に対応できる「柔軟性」と、規制内容の「妥当性(労働者保護の必要性)」を同時に満たすという有用性が認められること、しかしその前提として、柔軟化の主体や対象事項の選別、さらに限界設定の有無の検討が必要であることを明らかにした。平成21年度は、こうした示唆を日本の議論につなげることが課題であった。その結果、法規制の柔軟化の制度設計について日本でとりうる具体的な選択肢を示すことができたほか、望ましい労働者保護法のあり方とはいかなるものかという、より発展的な議論へと話を進めることができた。本研究課題の最終的な成果としては、一定の場合に集団的労使合意による逸脱を認める、いわば「半強行的」な国家規制は、一定の制度的基盤が整えられれば、労働者保護法の新たなスタイルとして積極的に正当化・活用できること、今後国家はそのための制度的基盤を手続面を中心に整備していく必要があること、を明らかにすることができたという点にある。これは、労働法分野において規制手法を選択する際に有用となる基本的視点であり、その意味で重要な成果であると思われる。
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