2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730040
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
細谷 越史 Kagawa University, 法務研究科, 准教授 (60368389)
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Keywords | 労働者の過誤行為責任 / 労働者の損害賠償責任 / 労働者の責任 |
Research Abstract |
平成20年度に重心を置いて研究してきたドイツ法における、とくに労働者の損害賠償責任の制限法理や解雇制限法理を参考にして、平成21年度は、主に、ドイツ法のエッセンスを日本の責任制限法理や解雇制限法理に反映させながら、日本の法理を支える法的根拠とそこから導かれる具体的な判断基準を導出しようと試みてきた。こうした研究の一部を発表したのが「労働者に対する損害賠償請求」『労働判例百選〔第8版〕』である。そこでは、この問題に関する判例・学説を詳細に整理・検討することにくわえて、ドイツ法などの議論を参考にして、従来の判例・学説が十分に明らかにし得なかった責任制限の根拠と具体的判断基準を提示するよう試みた。また、労働者の過誤行為責任を論じるには、ドイツの労働契約法全般を視野に入れて研究する必要があるため、ドイツ労働契約法研究会に加入し、その研究会において、平成21年8月21日に「ドイツにおける損害賠償責任制限法理について」と題する報告を行い、会員と意見交換を行った。ドイツでは数十年以上にわたり労働契約法の立法化が議論されてきたが、最近、ドイツの有力な研究者らによる労働契約法草案が公開され、これは学界のみならず経済界そして実務の側なども巻き込んで活発な議論を呼び起こし、そうした議論の中でこの草案は検討や修正が加えられた。その草案を先のドイツ労働契約法研究会のメンバーが共同で翻訳したものが、ドイツ労働契約法草案(翻訳)日独労働法協会会報10号である。その際には、単に翻訳するだけでなく、何度か研究会を開き、その場で草案の背景にある判例・学説の議論動向などを検討することが必要であり、こうした検討から、ドイツの過誤行為責任論の研究を深めるに際して重要な示唆を得ることができた。以上の研究により、これまでの労働者の過誤行為責任論に関する研究をまとめて発表するための重要な準備作業を大いに進展させることができた。
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Research Products
(2 results)