2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730045
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
斎藤 彰子 Nagoya University, 大学院・法学研究科, 准教授 (70334745)
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Keywords | 不作為 / 共犯 |
Research Abstract |
本年度は、研究計画に則り、作為正犯者と競合する公務員の職務違反の不作為を、刑法上どのように評価すべきか、とりわけ、それは正犯と評価されるべきか共犯と評価されるべきか、を検討する前提として、その区別基準として両者の作為義務の相違に着目する見解が少なくないことから、そもそも、刑罰をもって義務づけうる具体的作為の限界をどのように考えるべきか、それは、正犯の場合と共犯の場合とで異なるのか、という観点から、作為と不作為が競合する場合における不作為の刑法的評価に関する内外の判例・文献の分析・検討を行った。 とくに、近時わが国の最高裁により、作為犯と競合する公務員の職務違反行為について公務員個人の刑事責任が問われた薬害エイズ旧厚生省ルート事件に関して、平成20年3月3日、当時の厚生省薬務局生物製剤課長の刑事責任を肯定する判決が出された。そこで、かつて同事件第1審判決を契機に行った検討(拙稿「公務員の職務違反の不作為と刑事責任」金沢法学49巻1号45頁)以降の判例・文献の収集・分析を進めた。その結果は、『平成20年度重要判例解説』(有斐閣、本年4月刊行予定)掲載の判例解説において反映される見通しである。 また、平成20年8月29日から平成20年9月8日まで、本研究が比較法の対象とするドイツの、ハイデルベルク大学刑事学研究所に出張し、上記問題について、いまだ我が国に紹介されていない文献等を収集するとともに、現地研究者らとの意見交換等を通じて、ドイツの議論状況につき、重要な学術的知見・資料を獲得した。他方、我が国においても、近年、不作為による幇助犯の成否に関して、下級審ではあるが、要求される具体的な作為の中身にまで踏み込んで判断したものが現れ、それを契機とした検討が学説においても行われつつある。 来年度は、このような実務や理論の新しい展開もフォローしつつ、さらに研究を深化させていきたい。
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