2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730045
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
齊藤 彰子 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 准教授 (70334745)
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Keywords | 刑事法学 / 不作為 / 共犯 |
Research Abstract |
公務員個人の刑事責任につき関心が高まるきっかけとなった薬害エイズ事件旧厚生省ルート事件のように、実際上、公務員の職務違反行為についての刑事責任が問題となる場合は、犯罪結果の実現に対する公務員による関与が過失不作為によって行われることが少なくないことから、昨年度に引き続き、本年度も、公務員の過失責任が問題となる場合を中心に、文献の収集・検討をすすめたが、本年度はとりわけ、同一の結果につき、過失が認められる者が複数存在する場合における、各人の過失責任の関係(過失同時正犯の競合か、それとも、過失の(広義の)共犯関係が認められるか)に焦点をあてて検討を進めた。学説においては、故意犯と同じく、過失犯においても正犯と常助犯・教唆犯が区別され、また、過失の共同正犯もありうるとする立場(従って、法益侵害結果につき過失が認められる全ての者が正犯として処罰されるわけではなく、常助犯・教唆犯として不可罰になる場合もあるとする理解)が有力であるのに対して、判例においては、過失の共同正犯を認めた例も存在するものの、その要件は必ずしも明らかではなく、他方で、安易に過失の競合とすることで、本来不可罰とされるべき過失による幇助犯・教唆犯が、単独正犯として可罰化されているのではないかとの疑念を禁じ得ないものも存在する。この問題については、近年重要な判例が相次いで出されており、その多くが、共同正犯ではなく、同時正犯として処理している。とりわけ、同一の結果につき、公務員と私人の両者の過失不作為責任が同一の手続内で争われ、両者の関係が問題とされた例である明石市花火大会歩道橋事故(最決平成22年5月31日)は、本研究課題との関係では非常に重要な問題を含むものであり、本件を題材に、公務員に作為義務が認められる根拠如何、同一の結果につき私人と公務員の両者の過失が問われる場合における公務員の過失責任のあり方につき、検討し、その成果を、今年5月の刑事法総合研究会にて発表する予定である。
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Research Products
(4 results)