2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730047
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井上 宜裕 Kyushu University, 大学院・法学研究院, 准教授 (70365005)
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Keywords | 損害回復制度 / 違法の統一性 / 私訴 / 犯罪被害者 |
Research Abstract |
本年度は、我が国の損害回復制度の手続法上及び実体法上の問題点を抽出し、改善策を模索するため、フランス法との比較を行った。フランスでは、近時、一定の場合、無罪判決と民事賠償が両立する旨を規定する立法が相次いでいる。中でも、2000年7月10日の法律(Loi no 85-677)は、過失犯の定義の精確化を図った上で、刑法上のfauteの不存在と民法上のfauteの存在の両立可能性を肯定する点で注目に値する。 fauteの一元性をめぐる判例、学説、及び、立法の動向を概観した結果、フランスにおいては、何らかの形で、犯罪被害者に民事的な救済手段を与えようとする大きな流れが看取される。これとともに、fauteの一元性がもたらす弊害の一つであった「fauteの塵」の問題への対処の必要性も常に意識されていたことが判明した。2000年7月10日の法律では、当初の目的は公的決定者の刑罰からの解放であったが、判例にもみられるように、適用場面はこれに限られるものではなく、今日に至るまでの展開をみる限り、一定の場合に、無罪判決と民事賠償が両立しうるかが一貫して争点となっていたように思われる。その意味では、緊急状況において、緊急行為者の不処罰と民事賠償(補償)を両立させようとする動きと同じ方向性がここに存在しているといえる。 フランスでfauteの一元性が完全に消滅したといえるかどうかについては、学説の評価も分かれており、今後の判例等の展開を注意深く検証していく必要がある。
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Research Products
(1 results)