2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730056
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
松井 智予 Tohoku University, 大学院・法学研究科, 准教授 (70313062)
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Keywords | 理事会決議 / 寄付者 / ガバナンス |
Research Abstract |
本年度は、会社法に関連する評釈などを行いつつそのファイナンス・ガバナンスがどの程度非営利法人に共通する要素を含むかについて考察を行った。アメリカでは非営利法人かどうかは選択で決まる部分があり、会社と実質的に同じ仕組みでのガバナンスが可能であるが、資金の返還を行わない点では両者は本質的に異なる。 ガバナンスの点からは、下記11の二件目に記載した判例が取り扱う墓地開発などは、株式会社でない形態で行われることが多く、本取締役会決議は非営利法人理事会決議と基本的に類似性格を持つものである。非営利法人には小規模なものが多く、また研究の主たる関心となっている資産とくに不動産の価値の寄与度の大きな会社については、その寄付者が経営に参画していることが通常であることから、理事会の決裁を経ない重要な決定を行って法人を破綻に追いやることが非常に強く懸念される。その意味で、本件判決は非営利法人ガバナンスと関連が深く重要性があるものと考えられる。 ファイナンスの点からは、同一件目の判例が取り扱う名簿閲覧の形での出資者ガバナンスが注目される。会社法においては、「権利の乱用」にわたる閲覧請求は認められないとし、これらと、より具体的な拒絶事由である競争関係にある場合との関係が議論される。非営利法人においては、競争関係は観念しにくいところから、こうした概念の扱いと意義を確認する意味が認められる。第3件目については、出資者の裾野を広げるという効果は、会社におけるような出資単位のアレンジメントでは達成しにくいことが明らかとなったと思われる。
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