2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730057
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 亘 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (00282533)
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Keywords | 民事法学 / 記号組織法 / 企業買収 / 敵対的買収 / 防衛策 / 公開買付規制 |
Research Abstract |
本年度は、上場会社において敵対的買収と防衛策に関して目だった裁判例はなかったが、非上場会社において、株主間の支配権争いに際し、会社が一方の株主グループによる中立派株主からの株式取得資金を援助することの適法性が争われた、興味深い裁判例が登場した。報告者は、このような事例が、支配権争いに際して取締役会が一方の株主グループに第三者割当増資をするという、典型的な買収防衛策と利益状況がよく似ている点に着目し、後者の場合と軌を一にする要件のもとで、その適法性を判断するべきであるとの解釈論を展開した(後掲11の第一の論文(上・下))。 一方、近年は、MBO・親子会社間の組織再編あるいは「締め出し」取引に関して(サイバード事件、インテリジェンス事件等)、株式の取得・買取価格の決定が申し立てられたり、その取得方法(一部の種類の株主のみに対する公開買付け)の適法性(カネボウ事件)をめぐる問題が、裁判で多く争われた。本研究の目的は、敵対的買収に対する防衛策のあり方を直接の研究対象にしつつも、広く適切な買収法制のあり方を研究することにあったから、本年度の研究対象も、いきおい、上記のような類型のM&A取引の法的規律に関する検討に重点は移った。後掲11の第二の論文(英語論文)は、その成果の一つであり、いわゆるゴーイング・プライベート取引に対して、裁判所の介入する度合いが日米で非常に異なることを示すことによって、日本の法制度(裁判実務を含む)について改善の可能性を示したものである。
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Research Products
(3 results)