2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730057
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 亘 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (00282533)
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Keywords | 民事法 / 企業組織法 / 買収法制 / 敵対的買収 / 買収防衛策 / 公開買付規制 |
Research Abstract |
本年度は、研究期間の最終年度に当たるため、企業買収、特に敵対的買収と防衛策に関する適切な法規制を包括的に検討する作業を行った。これまでの研究により、公開買付けに際しては取締役に厳格に中立を守る義務を課すとともに、買収者に対しても種々の規制を課し、株主が適切な状況下で買収の是非を判断できるように配慮している英国の買収規制に関する理解が深まった。特に、従来、いわゆる義務的公開買付けにのみ焦点が当てられがちであった英国の規制が、買付期間延長制度や公開買付け自体に対して株主に賛否を表明させる制度を通じ、強圧性に対処する機能も有すること、および、買収者に公開買付けをするかどうかの立場を明確するように強制する制度を通じ、買収が対象会社の経営を長く撹乱させないようにする制度も有する点が明らかとなったのは、収穫であった。そして、こうした英国型規制をモデルにして、わが国の買収規制を再構築すべきであるという基本的認識に到達した。また、わが国の敵対的買収と防衛策に関する裁判例を再度、検証し、現行法制が、防衛策の適否については判例の法形成に委ねる米国型の買収法制をとりつつも、買収者に、防衛策の違法性を争う十分な機会を提供していないため、法的不明確性が買収に対する萎縮効果を与えているという認識を得たことも、上記のような立場を強ある要因となった。本年度は、従来公表してきた研究論文をまとめるとともに、上記の基本的立場に立って、買収法制の改革を提唱する一章を盛り込んだ著作(単行本)の執筆に取り組んだ。しかし、従来の裁判例および英国の買収規制の検証に予想以上の時間がかかったため、本研究期間内に著作を完成するには至らなかった。よって、本年度の研究成果としての刊行物は存在しない。しかし、研究期間終了後の現在も執筆を進めており、平成24年度中に、単行本の出版にこぎつけられる予定である。
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