2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730062
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
渡部 美由紀 名古屋大学, 大学院・法学研究科, 准教授 (40271853)
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Keywords | 民事訴訟法 / 集団訴訟 |
Research Abstract |
当該年度は、前年度に引き続き(繰越)、前半では、資料収集およびその読解・整理・分析を行い、その過程において翻訳論文を2つ公表した。後半では、以上の資料分析の結果を統括し、論文執筆に着手した。本研究課題は、先に申請者が執筆した論文において残された課題であった団体訴訟における判決の遮断効の主観的・客観的範囲についてのより立ち入った検討を目的とするものであるが、その前提として、集団訴訟における実体的利益分析が必要であり、射程を明確にすることの必要性が認識された。すなわち、集団訴訟と一口にいっても、被害類型は多様であり、(1)複数名が被告の一個の不法行為により損害を受けているが、個人の損害額が大きく、単独でも訴訟提起するモチベーションがある場合(大規模不法行為等)、(2)被告の継続的な不法行為により損害が生じているが、個人の損害額は少額であり、単独での訴訟提起が期待できない場合、(3)被告による類似した継続的な不法行為により損害を被った者が複数存在する場合等に分類されうる。消費者団体訴訟がカバーするのは、主として(2)(3)類型であり((1)類型では提起された複数訴訟を訴訟法上どう取り扱うべきかという問題が生じるにとどまる)、一般に従来訴訟に至らなかったものである。認定団体が勝訴判決を得た場合、被告が違法行為を行っていたという判決理由中の判断に拘束力が生じることを前提としてこれを第三者である消費者が援用できるか問題になるが、従来の判決効理論では、当該訴訟当事者でない者が判決効を援用することは困難である。しかし、団体訴訟の構造、判決効の片面的拡張理論、ドイツ法の「援用」制度の実質的根拠および判決の遮断効論の展開を検討することにより、これを認めうると考える。以上の成果については、近く公表予定である。今後、国際不法行為ないし国際集団訴訟を念頭においた議論が必要であると思われる。
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Research Products
(2 results)