2010 Fiscal Year Annual Research Report
非公開会社における議決権制限株式の規制に関する比較法的研究
Project/Area Number |
20730065
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
長阪 守 和歌山大学, 経済学部, 准教授 (30379606)
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Keywords | 非公開会社 / ベンチャー企業 / 種類株式 / 譲渡制限株式 / 資金調達 |
Research Abstract |
種類株式については、多数の検討事項があるが、本研究において特に明確にしたいのは、非公開会社において、1現状の議決権制限株式がどのような問題を起こしているか、2種類株式設計時の法的な制約原理をどのように考えるべきか、3現状の問題を打開するために、定款(付属定款)への記載事項について、実際にどのように解釈すべきか、の三点であった。 本年度は、昨年度に引き続き、米国・EUとの比較法的検討を加えるという本研究の三年目として、主にEU地域における主要な判例の分析を中心とする作業を行った。 本年度の成果として、EU特にドイツ・フランスにおいては、種類株式設計時の定款への記載について、明確な実務的な慣行があり、当該、慣行的な記載方法および上場企業においては、上場の審査時における定款の記載方法のチェックにより、少数派株主の保護の点で問題になりそうな事柄の多くが、実質的な事前規制を受けていることを証明できたことである。この点については、日本法の改善にも大きな示唆となりうる可能性が認められ、大きな意義があると考えている。 なお、当該研究により得た資料の多くが米国、およびEU地域の実務的にも使用されている文章であることや、判例の解釈について、更なる知見が必要であることから、資料をとりまとめ、書籍として報告することに予想以上の時間がかかってしまっている。 今後は、各種資料をとりまとめつつ、現時点で明らかに日本法制について問題となりそうなところを論文等の形で指摘しつつ、日本、EU、米国の3地域についての比較法的な考察については、最近特に話題となっている公開会社法制との関連からも、一つの試案としてとりまとめ、報告する予定である。
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