2008 Fiscal Year Annual Research Report
高齢化社会における遺言作成プロセスのあるべき姿について
Project/Area Number |
20730066
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
中川 忠晃 Okayama University, 大学院・社会文化科学研究科, 准教授 (10315038)
|
Keywords | 高齢者 / 遺言作成プロセス / 遺言執行者 / 弁護士 / 弁護士倫理 |
Research Abstract |
本年度は、高齢者が作成する遺言作成プロセスと遺言執行への弁護士の関わり方について研究を進めた。東京高決平成19年10月23日家月60巻10号61頁は、83歳の高齢者とある女性が先妻の子たちに極秘で婚姻する際に証人になった上に、高齢者が作成した公正証書遺言の証人及び遺言執行者となったという事案であった。遺言者は全遺産を後妻に相続させる旨の遺言を作成したが、それは遺産の合理的分配を後妻に委ねるという意図に過ぎず、その他の相続人たちの遺留分や相続人たちが経営を承継する自己経営の会社の運営に支障がないように配慮するようにとの付言事項が記載されていた。それにもかかわらず、上記弁護士たちは後妻が有利になるような行為ばかりをなしたり後妻が上記会社を相手取って提起した訴訟の代理人となるなど(事実上、後妻と相続人間の訴訟である)、著しい不公平性・偏頗性がみられる上に遺言者意思に明白に反していると認定され、遺言執行者を解任された。また、広島高松江支決平3. 4. 9家月44巻9号51頁では、相続開始後も申立外会社の顧問弁護士として一般的な法律問題の相談に応じてきたことに毫も問題は存せず、相談者である相続人が他の共同相続人を相手取って提起した訴訟において訴訟代理人としての地位に就いたのは、もとより遺言執行者の資格においてではなく、弁護士として受任したものではあるけれども、本件の紛争実態とその弁護士が本件相続分指定受託者と遺言執行者の地位を併有していることを踏まえるならば、相続人間の誤解を避けるため可及的に回避すべきであったと指摘されており、この指摘は注目に値する。弁護士が遺言執行者になるには、相続人や受遺者とは全く無関係な弁護士を遺言者自身が探して遺言で指定するか(民1006条1項)、家庭裁判所に相続人や受遺者とは全く無関係な弁護士を選任してもらうか(民1010条)ということになると思われるが、これが妥当なプロセスであるように思われる。
|
Research Products
(1 results)