2009 Fiscal Year Annual Research Report
高齢化社会における遺言作成プロセスのあるべき姿について
Project/Area Number |
20730066
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
中川 忠晃 Okayama University, 大学院・社会文化科学研究科, 准教授 (10315038)
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Keywords | 遺言 / 作成プロセス / 家族協定 / 相続契約 |
Research Abstract |
親族の誰かが高齢者の介護や財産の管理などの「世話」をすることは珍しいことではない。その後高齢者の死亡時に寄与分で調整されるが、その「世話」によって遺産が維持・増加している場合に限られ、かつ、その「世話」が親族間で通常なされるものでなければならない。そのため、実際には寄与分が認められることは少なく、認めらても満足のいく額でないことが多く、寄与分をめぐって紛争が激化することがしばしば見られる。そのようなトラブルを回避するために、そのような「世話」をした者への「感謝の気持ち」や「報い」を遺言で表すべきだとして、遺言を奨励する見解が見受けられる。確かに、法定相続ではうまく実現できない適正な遺産の分配を実現できる機能を遺言は有している。しかし、劇的な効果がある反面副作用もあり、用法・用量を間違えると、場合によっては死に至ることすらある強い薬剤については医師や薬剤師という薬剤の専門家にコントロールを委ねられているのと同様に、法律界では、強烈な効果を持つ遺言もやはり専門家によるコントロールが必要であろう。もちろん、自筆証書遺言は法律家の関与は不要だが、フランスの遺言実務では自筆証書遺言を作成する際にもnotaireに相談し助言を仰ぐのが通常であると言われている。このような遺言に付随するサブシステムがうまく機能しておらず、しかも、利害関係人である家族の遺言作成プロセスへの関与を排除しない日本において野放しに遺言を素人の手に委ねることは非常に危険であり、できるだけ避けるべきではないかと考える。また、遺言作成の際には必ず関係者が一堂に会した場所で十分に話し合って合意した場合に限って遺言を作るべきであると考える。なぜなら、人が一番感情的になるのは自分が知らないところで勝手にいろんな事が決められていることであり、感情は判断を狂わせ、その結果、後の遺産分割がうまくいかなくなる事が多いからである。
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Research Products
(2 results)