2011 Fiscal Year Annual Research Report
高齢化社会における遺言作成プロセスのあるべき姿について
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20730066
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
中川 忠晃 岡山大学, 大学院・社会文化科学研究科, 准教授 (10315038)
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Keywords | 遺言作成プロセス / 高齢者 / 公証人 |
Research Abstract |
本年度は、日本とフランスにおける公正証書遺言の作成プロセスについて比較研究を行った。公正証書遺言の方式の基本は、日本民法では969条によって定められ、同条2号において「遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること」が求められている。同条はフランス民法972条に由来する規定であり、フランスにおいては「口授」は遺言者の言葉を正確に筆記することとされている。ところが、日本法においては「口授」はいかなるものであるかについては詳細に分析検討されてきたとは言い難い状況にあり、かつ、起草者もそこまでの厳格性を求めていなかったこともあってか、実際の遣言実務においてはこの要件はかなり緩和されている。そのため、遺言の趣旨を公証人に口頭で伝えることはおろか自分の名前や住所すら満足に言えない状態にある者を前にして、他者(多くは遣贈を受ける予定の者が依頼した弁護士)が作成した(と思われる)文面を公証人が読み上げ、それから公証人が「遺言者」に問いかけるとかろうじて頷いたので「口授」があったとして公正証書遺言が作成されたというケースも存在する。ただ、一口に公証人といってもその実務は多様であり、上記のような公証人もいれば、遺言者の家族等の関係者を全て退室させて完全に自由なる意思が表示できる環境を確保した上で丁寧に意思能力を確認してから遺言作成手続に入る公証人もいる。フランスではこのような対応は当然のこととされているが、残念ながら日本においてはそうではない。軽度の知的障害者の場合、家族から嫌われたくない、良く思われたいと思ったり、家族の意に反することをして捨てられることを恐れて家族に迎合して言いなりになってしまうケースは決して少なくない。軽度知的障害者のみならず、健常者も含めた全ての遺言者に付き完全に自由なる意思に基づいて遺言を作成できる環境の整備が課題であるが、特に前者については慎重な対応が必要であろう。
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Research Products
(4 results)