2008 Fiscal Year Annual Research Report
株主間利害調整の仕組みとしての株式買取請求権制度の意義と限界
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20730070
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
笠原 武朗 Kyushu University, 大学院・法学研究院, 准教授 (90346750)
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Keywords | 株式買取請求権 / 資本多数決 / 株主間利害調整 / 株主平等原則 / 固有権 / 公正な価格 / 全部取得条項付種類株式 / 損害賠償 |
Research Abstract |
昨年度の研究では、我が国における株式買取請求権制度をはじめとする株主間利害調整のための仕組み(株主総会決議の内容に着目した裁判所による介入の可能性(決議取消訴訟)、一定の事項に関する厳格な決議要件、個々の株主の同意を要するとするルール、株式買取請求権、一定の行為の禁止、種類株主総会制度、株式の権利内容の設計による自衛の可能性等)と、それを補う解釈論(株主平等原則に関する議論、固有権論、大株主の誠実義務論、解釈による決議要件の加重、損害賠償の可能性に関する議論等)の展開を追った。全体として見ると、制定法上の仕組みには種々の不整合があり、その都度のアドホックな対応がなされてきたことが確認できた。無論、完全に整合的な仕組みを用意するのは困難であり、そのため、不明確さは残るものの、様々な解釈論による対応が重要な意義を有することを再認識することとなった。また、現在の状況と比較したとき、一定の行為を行うことを禁止したり違法としたりする手法が実は大きな意味を持っていたことも明らかとなった。 一定の行為の禁止という手法が場合によりある種の非効率を生むことがあることから、現在の我が国の会社法はそのような手法の役割を大きく低下させている。その代わりに役割を増大させているのが株式買取請求権をはじめとする金銭的補償の機会を用意することによる利害調整であるが、柔軟性がある分、少数株主等の保護に関しては限界がある。そのような状況の変化を踏まえて、従来の解釈論による対応を見直す必要があり、昨年度の研究はそのための基礎的考察の一部としての意義を有する。
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Research Products
(1 results)