2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730072
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
植本 幸子 Kagoshima University, 法文学部, 准教授 (20423725)
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Keywords | アメリカ法 / 擬制信託 / 信託 / 訴訟係属登録 / 優先的取戻し / lisendens / 比較法 / 法定優先権 |
Research Abstract |
本研究の目的は、アメリカ法の擬制信託の有する優先的取戻しに着目しその考察モデルを明らかにすることにより、日本における信託法理と物上代位の議論に不可欠な優先的取戻しの具体的基準についての考察モデルを探求することにある。その目的のため、本年度の実施計画においては、iアメリカ法の学説の分析、ii日本法に関する文献収集、iii関連分野の報告のある学会等への出席、iv成果をまとめ研究会において口頭報告を行う、ことの4点を計画し、それらについてはいずれも達成された。 うちiにおける学説の分析において、擬制信託の機能に直接大きな影響を与えうる訴訟係属登録との関係を扱った論稿を検討した。訴訟係属登録後に出現した第三者には擬制悪意が認められることになる。擬制信託を認めたくない第三者が善意有償取得者であれば擬制信託の責任は負わなくて良いのだが、訴訟係属登録が有効になされ擬制悪意が認められると実際には善意であっても擬制信託の責任を負うことになる。本来は訴訟の提起さえあれば認められていた擬制悪意が登録のある場合にのみ制限されることから、訴訟係属登録についての裁判所の態度が擬制信託の実効性を左右することになりかねない。これらのことについては、iv研究会報告を経た上で、その成果の一部について鹿児島大学法学論集43巻2号飯田泰雄教授退職記念号39頁に「擬制信託の制限に関連する小報告〜訴訟係属登録その1」と題し公表した。 以上のことを通して本年度は、訴訟係属登録との関係で、実際には擬制信託の優先的取戻しの機能が損われる問題について検討した。訴訟係属登録との関係の重要性が認識されたため、引き続き分析を続け平成21年中に公表する計画である。
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