2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730072
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
植本 幸子 鹿児島大学, 法文学部, 准教授 (20423725)
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Keywords | アメリカ法 / 擬制信託 / 信託法理 / 訴訟継続登録 / 優先的取戻し / lis pendens / 比較法 / 法定優先権 |
Research Abstract |
本研究の目的は、アメリカ法における擬制信託の優先的取戻し機能に着目し、その考察モデルを明らかにすることにある。本年度は、平成21年度に引き続き、優先的取戻しに関連する文献の収集分析と学会参加による情報収集(研究実施計画2、4)を行った上で、訴訟係属登録と擬制信託に関連するカリフォルニア州の裁判例の分析を押し進めた(研究実施計画1)。その上で、過年度において考察した訴訟係属登録における擬制信託の否定例と肯定例すべてについて総括的な分析を行い、研究会における口頭報告を行いそこでの議論を研究に反映させる作業を行った(研究実施計画3)。 訴訟係属登録後に出現した第三者丙、つまり当該登録のある不動産に関連する価値を甲に返す義務のある乙からその不動産を譲り受けた丙は、本当はその財産が乙の財産ではないということを知っていたという扱いになる。そのような丙は、当該登録のある不動産に関連する価値をすべて本来の権利者である甲に返さなければならない。このような取り扱いは、本来は甲が乙に対して訴訟を提起することにより認められていたが、訴えの提起だけではなく登録が必要であるとする裁判例がカリフォルニア州に存在する。そこではさらに登録自体に消極的な態度を取る傾向も見られるため、本来権利を有する甲が本来法的に予定されている裁判上の救済を受けられなくなってしまうことになりかねない。甲が本来優先的に取り戻せるはずである原理と照らし合わせ、いかなる場合に取戻しが認められ、あるいは認められないのかにつき分析・検討を行った。以上の成果について、本年度は「擬制信託の制限に関連する小報告~訴訟係属登録その4、その5」として、鹿児島大学法学論集45巻1号に公表され、同2号において公表が予定されている。
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