2008 Fiscal Year Annual Research Report
コーポレート・ガバナンスにおける役員報酬規制の意義
Project/Area Number |
20730073
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
尾崎 悠一 Tokyo Metropolitan University, 社会科学研究科, 准教授 (90376393)
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Keywords | 民事法学 / コーポレート・ガバナンス |
Research Abstract |
初年度に当たる平成20年度は, 役員報酬規制についての, 比較法的検討のための基礎的な作業と経済学的・経営学的知見の摂取に努めた。 比較法的検討の第一歩として, アメリカにおける役員報酬についての裁判例の整理・分析と, 役員報酬についての学説の整理・分析を行った。アメリカでは, 1930年代以降, ストック・オプションを中心に役員報酬の過大性をめぐって争われた裁判例が多く存在している。これらの整理・分析を通して, 報酬決定手続(過程)を法的に検討する際の出発点として, 裁判規範としてどのようなルールが成立しているのか, 報酬の適切性についてどの程度の司法介入が必要なのかという点について検討した。これらの裁判例・関連学説の検討は次年度以降の研究の基盤となるものと考えられる。また, 日本法の現状について確認すべく, 日本の役員報酬に関連する裁判例を再検討した。 コーポレート・ガバナンスについてのより一般的な文脈から役員報酬規制の検討をするために, 取締役の忠実義務・注意義務について, 日米の判例・学説の整理・分析も試みた。前述のアメリカの裁判例においても, 役員の注意義務・忠実義務は繰り返し問題とされており, また, 日本法においても, 役員報酬規制は役員の利益相反取引の一類型であり, 忠実義務の問題であるとも捉えられているので, 今後の研究に不可欠の作業である。この点の研究は, 今年度の段階においては, 極めて部分的なものにとどまらざるを得なかったが, 後掲の成果は, 従業員の引抜き・顧客奪取という具体的な場面で取締役の忠実義務が問題となったわが国の裁判例について検討したものである。
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Research Products
(1 results)