2010 Fiscal Year Annual Research Report
コーポレート・ガバナンスにおける役員報酬規制の意義
Project/Area Number |
20730073
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
尾崎 悠一 首都大学東京, 社会科学研究科, 准教授 (90376393)
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Keywords | 民事法学 / コーポレート・ガバナンス |
Research Abstract |
平成22年度は,前々年度の調査・研究(アメリカにおける役員報酬についての裁判例の整理・分析と,役員報酬についての学説の整理・分析),前年度の調査・研究(ヨーロッパにおける役員報酬の動向の分析,今般の金融危機を契機とした金融機関の報酬体系に対する規制の調査・分析,及び,金融機関の報酬体系に関する議論の事業会社のコーポレート・ガバナンスに対する影響についての考察)をさらに深めると同時に,その成果を日本法の解釈論・立法論へとつなげる試みを行った。後掲の成果(「金融危機と役員報酬規制」)は,金融危機後の役員報酬規制の動向を分析したものである。すなわち,金融機関の役員報酬の規律に関するG20等での国際合意,米国のドッド・フランク・ウォールストリート改革法(金融改革法)及びそれらをめぐる議論を素材に,報酬規制がコーポレート・ガバナンスにおいて果たすことが期待される役割,報酬規制の対象となる人的範囲,金融機関における役員報酬規制と事業会社における役員報酬規制の共通点と相違点,役員報酬を設計する際の考慮要素およびそれらのトレードオフについて検討した。また,事後的に不正等が発覚した際に役員報酬を返還させるクローバックと呼ばれる仕組みについて,金融改革法での議論とサーベンス・オックスリー法をめぐる議論を比較・検討した。日本法について具体的な提言はできなかったものの,日本における役員報酬規制を考えるうえで考慮すべき事項について明らかにした。 クローバックは役員の任務懈怠についての損害賠償の一種であるとの理解も可能であり,役員の損害賠償責任と役員報酬規制を総合的に検討する必要が明らかになったが,後掲の成果(「取締役の法令遵守義務と第三者に対する責任」)は,取締役の対第三者責任についての裁判例を素材に,取締役の任務懈怠責任について検討したものである。
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Research Products
(2 results)