2008 Fiscal Year Annual Research Report
団体訴訟の民事実体法的基礎-民法・行政法・憲法からの複眼的アプローチ
Project/Area Number |
20730082
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
宮澤 俊昭 Kinki University, 法学部, 准教授 (30368279)
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Keywords | 団体訴訟制度 / 差止請求権 / 消費者団体 / 集合的・公共的利益 |
Research Abstract |
本年度は、研究実施計画に従い、次の三つの作業を行った。 第一は立法過程における理論にわる議論の検討である。本研究における考察の出発点として位置づけられるこの作業から、立法過程においては機能的・政策的根拠は示されるものの、私法上の権利としての体系的・理論的根拠については明確に示されていないことが明らかとたった。なお本研究との関係では、特に、差止請求権が消費者個人に一般的には認められにくい権利であるという段階と、差止請求権を消費者団体に認めるという段階の二段階の理論的飛躍があるとの指摘が重要となる。 第二は、民法理論において団体訴訟制度を体系的・内在的に位置づけるための考察である。この考察は、社会において自律的に形成された秩序としての私法秩序に含まれる規範が存在する場合には、その規範に基づいて強制力を通じて実現されることの認められる法的地位を権利と表現し、それを国家の強制力の発動の基準にしなければならない、との理論的枠組みを前提において行うた。その結果、集合的・公共的利益に対する私法上の権利を、社会において自律的に形成された規範に基づいて認めることは民事実体法理論として否定することはできないが、団体訴訟制度の民事実体法的基礎となる規範が社会において自律的に形成されていると捉えることは困難であることとの帰結に至った。との帰結は、団体訴訟制度を民事実体法理論によって基礎づけるためには、自律的な規範の吸い上げと政策的考慮とをどのように関連づけるのか、という問題が重要な意味を持つことを示している。 第三は、比較法的見地からの考察である。本年度は、ドイツにおける団体訴訟制度およびイギリスにおける公益訴訟についての資料を収集した。
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