2011 Fiscal Year Annual Research Report
団体訴訟の民事実体法的基礎-民法・行政法・憲法からの複眼的アプローチ
Project/Area Number |
20730082
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
宮澤 俊昭 横浜国立大学, 国際社会科学研究科, 准教授 (30368279)
|
Keywords | 団体訴訟 / 集合的利益 / 公法と私法 / 環境 / 消費者 |
Research Abstract |
本年度は、研究期間の最終年度の最終年度であったので、これまでの検討内容を総括し、結論を導くための研究を行った。その結果として、次のように団体訴訟を実体法的に基礎付けることができるとの結論に達した。 まず、団体訴訟制度の法的構成として次の三つの類型を析出できる。(1)団体が、行政法理論から導かれる法的地位に基づいて行政事件訴訟制度を通じて行政主体に訴えを提起する。(2)団体が、私法理論から導かれる法的地位に基づいて民事訴訟制度を通じて私的主体に訴えを提起する。(3)団体が、行政法理論から導かれる法的地位に基づいて民事訴訟制度を通じて私的主体に訴えを提起する。 行政主体に対する団体の訴えを認める制度を構築する場合は、(1)の類型をとることになる。(1)の類型では、(α)行政団体に行政手続への参加権を認めたうえで、その参加権の侵害に対する司法的救済として参加を求める給付訴訟や参加権侵害を理由とする行政処分の取消訴訟等を認めるという構成、(β)行政の適法性確保・客観的法秩序維持を目的とする客観訴訟としての構成、(γ)不特定多数者の具体的利益・環境法的利益等の従来の私人の実体的権利とは異なる性質を持つ何らかの新しい利益を観念したうえで、それを法律上の利益として団体に抗告訴訟の原告適格を認める主観訴訟としての構成、という三つの具体的構成が考えられる。 私的主体に対する団体の訴えを認める制度を構築する場合は、(2)の類型と(3)の類型をとりうる。(2)の類型は、民事実体法理論に基づいて純粋に私的主体としての認められる法的地位であるのに対して、(3)の類型は、行政法理論に基づいて行政の代役として認められる法的地位である。そのため、両者は、完全に相互に独立した構成と理解でき、理論的には相互関係を調整することなく併存を認めることが可能となる。
|