2010 Fiscal Year Annual Research Report
選択発明と利用発明の特許性と保護範囲-インセンティヴ論からの考察-
Project/Area Number |
20730084
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉田 広志 北海道大学, 大学院・法学研究科, 准教授 (70360881)
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Keywords | 記載要件 / 補正・訂正 / 侵害警告 / 医薬品延長問題 |
Research Abstract |
「選択発明と利用発明の特許性と保護範囲」という研究に関し、今年度は、記載要件(実施可能要件およびサポート要件)について検討を始めた。記載要件は、開示の代償としてインセンティヴたる排他権を付与するというわが国特許制度の中で極めて重要な位置を占める要件であるが、どこまで/どの程度の記載が要求されるかは、ほとんど研究が進んでいなかった。これは、記載要件が技術的問題と密接に関係しているため、法学者の観点から研究が進みにくかったためと思われる。 研究代表者(吉田)は、法学者ながら理系出身の元弁理士であるため、独自の観点から記載要件に関する研究を進めた。そこで判明したことは、裁判例が膨大であり、包括的な議論は困難であるということであった。そこで検討方法を再考し、特定の分野、あるいは法改正以降に絞って裁判例の検討を始めた。作業は年度末の現在においてもなお進行中である。また、日本弁理士会中央知的財産研究所においても、同テーマの研究会に参加し、多くの研究者・実務家と議論を重ねている。 記載要件については、平成17年に知的財産高等裁判所の大合議判決が出されており、これが当面の研究の起点となる。その後、ここ2~3年で、この大合議判決との関係で注目すべき裁判例が出始めているので、それらの関係を中心に研究を進めた。来年度の早い時期に成果を公表する予定である。 昨年度来注力している補正・訂正に関しては、フォロー中である。またサブのテーマとして、特許権を行使した後に当該特許権が無効となった場合の権利者の責任についても研究を加えた。
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