2008 Fiscal Year Annual Research Report
医療被害救済における法の仕組みと役割ー補償と保険に着目して
Project/Area Number |
20730085
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
畑中 綾子 The University of Tokyo, 大学院・公共政策学連携研究部, JST受託研究特任研究員 (10436503)
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Keywords | 賠償と補償 / 医療被害救済 / 無過失補償制度 |
Research Abstract |
医療被害の救済にむけた現在の法制度として医薬品医療機器総合救済機構の救済部門の担当者および医療以外の分野では財団法人PLセンター理事長にインタビューを行い被害救済制度の果たす賠償制度への補完機能について調査を行った。医薬品分野では予算状況などによっては実際の認定基準が厳しく被害者救済の公平性に問題がないかなどの懸念もあったが、実際の認定の割合も高くまた認定にかかる期間も短縮されている現状が分かった。ただし、救済制度の認知度があがると同時に依頼件数も増加しており、認定基準の維持も課題となると思われる。また、PLセンターでのインタビューにおいては、製品の欠陥やメーカーの過失の認定が必要であるところ、これら欠陥や過失が否定される範囲はかなり狭まってきており、事実上の補償制度のように捉えられる現状も垣間見ることができた。 医療分野における具体的な補償制度としては、産科医療無過失補償制度が平成21年1月から開始されている。制度開始後とくに混乱などは報告されておらず、強制的な制度ではないにもかかわらず産科をもつ病院の99%以上が参加しており医療機関への認知は成功している。しかし一方で、実際には妊産婦が保険者となるにもかかわらず、制度の存在自体を知らずに医療機関を通じて参加が促されている実態がある。また一律3万円が収集される大規模な補償費用を産科における脳性まひというごく一分野にしか使用されないことについて不公平感が生じないのか、など制度の存在意義にも関わる疑問も提示される。この点、今年度スウェーデンの医療被害救済制度が社会保障制度に位置づけられた幅広い救済の仕組みにあることと比較すると、部分的な補償制度の点で特徴がみられる。他分野との公平性や制度そのもの効果の検証をおこなっていくことが今後に向けた重要な課題となると考える。
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Research Products
(2 results)