2008 Fiscal Year Annual Research Report
政策形成プロセスの国際移転過程における適応化と文脈修正に関する研究
Project/Area Number |
20730091
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松浦 正浩 The University of Tokyo, 大学院・公共政策学連携研究部, 特任准教授 (70456101)
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Keywords | 政策移転 / 政策普及 / 環境影響評価 / テクノロジーアセスメント / 規制影響評価 / 政策学習 |
Research Abstract |
本研究は、わが国への政策形成プロセスの移転事例を対象に、適応化と文脈修正を軸とする政策形成プロセスの移転メカニズムを明らかにするとともに、わが国の政策形成に与えるインプリケーションを導出することを主な目的として実施した。具体的には、規制影響分析(RIA)、戦略的環境アセスメント(SEA)、参加型テクノロジーアセスメント(pTA)について、それらの移転過程をヒアリング等により事例調査として詳細に追跡し、適応化と文脈修正の実態を捕捉し、分析を加えた。平成20年度は文献調査と国内外での聞き取り調査を中心に実施したほか、海外専門家へのヒアリングにより、政策形成プロセスの移転を検討する枠組みについて、組織論などの観点から有益な知見を得た。文献調査では、移転に関する事実関係の確認のため、3事例に関する資料を網羅的に収集整理した。聞き取り調査は、それぞれの政策形成プロセスの導入に携わった行政職員、研究者、コンサルタント等を対象に、個別聞き取り調査に加えてワークショップ形式で計23名からの聞き取り調査を実施した。これらの情報収集に基づき、3事例それぞれの導入過程に関する仮説をとりまとめた。RIAは従来制度への適応化が卓越したことで規制に関する意思決定への情報提供という所期の目的を十分に果たせていないと考えられる。SEAはガイドライン導入による市民参加機会の拡大など文脈修正が見られ、初期の目的を達成しているようにも見受けられるが、それはSEA単独の成果ではなく、他の既存政策に包摂されたことも一因だと考えられる。pTAについては、行政ではなく市民社会が政策形成プロセスの移転を試みた特徴的な事例であり、そのことが安易な適応化を防ぎ、結果として適応化と文脈修正のバランスがとれた移転を実現できたものの、汎用化に至っていないという限界もみられる。
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