2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730093
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鹿毛 利枝子 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (10362807)
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Keywords | 戦後復興 / 市民社会 / 非営利分野 / 比較政治学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本における第二次世界大戦後の復興の態様・進度の特徴を明らかにするとともに、その説明を試みることである。平成20年度は、その一年目として、二つの作業を行った。第一に、日本における戦後復興の態様・進度について、データの収集を行った。その際、社会・経済面にまたがる、なるべく多面的な観点から「復興」を捉えるとともに、復興の時間的変遷、地域的バリエーションにもきめ細かに目配りする。なお「復興」を測る上では、終戦直後とそれ以降のデータを比較するだけでなく、戦前・戦後のデータの比較も必要であることから、データは戦後についてのみならず、戦前にまで遡って収集した。幸い戦前期日本については、政府統計だけでなく民間機関によっても比較的多くのデータの蓄積があったので、これらを大いに活用することができた。また一部ではあるが、21年度に予定していた作業も少し前倒しをして、ヨーロッパ(特にイギリス)における戦後復興をめぐるデータの収集も始めることができた。ヨーロッパ諸国についての本格的なデータ収集は21年度に行う予定である。 第二に、平成21年度以降、日本における戦後復興の態様を説明する分析を始める下準備として、20年度には、収集中のデータを睨みながら、要因を絞り込む作業を始めた。ここでは、文献調査を中心に行った。文献調査としては、二方面からアプローチを試みた。まず本プロジェクトの最終的な主眼は、日本のみならず、多くの国々について適用可能な理論枠組みを構築することにあるので、日本の復興をめぐる文献のみならず、バルカン半島やイラクを始めとする最近の海外事例についての報告書や研究を精読した。第二に、理論面において、本研究において有力な仮説と考える、(1)社会経済的要因、(2)政策的要因、(3)社会的紐帯・ネットワーク面の要因、の3つの変数について、最新の理論動向を掴むとともに、それぞれの長所や限界についても検討を行った。 2009年3月にアメリカ合衆国・シカゴで開催されたAssociation for Asian Studiesにおいて、本研究のこれまでの成果を報告する機会を得た。ここでは、戦後復興・災害復興を専門とする多くの研究者と意見交換を行うことができ、21年度以降の研究の土台を作るとともに、今後の研究遂行の上で不可欠な人的ネットワークも築くことができた。
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