2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730094
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
田中 拓道 Niigata University, 人文社会・教育科学系, 准教授 (20333586)
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Keywords | フランス / 福祉国家 / 連帯 / 労働の終焉 / 社会的なもの / 連帯経済 / 社会的包摂 |
Research Abstract |
本年度の研究計画は、1 福祉国家変容の分析枠組みを構築し、2 1980年以降のフランス福祉国家の再編過程を「脱商品化」という観点かち検討し、3 他国との比較を行うことであった。 1 分析枠組みの構築 1970年代以降の主要な福祉国家論を、批判理論、権力資源動員論、新制度論、言説政治論の順に検討し、次の点を明らかにした。(1)福祉国家研究の考察対象は、構造、制度、アクターの順に移行し、統治エリートの行為にますます焦点が当てられている。(2)一方、グローバル化にともなう福祉制度の大幅な変容は、構造への認識、規範的正統性の二点を枠組みに組み込み、政治的対抗軸をとらえなおす作業を要請している(研究成果の論文「現代福祉国家理論の再検討」および「現代福祉国家研究における「政治」」)。 2 フランス福祉国家の再編 1990年代からのフランス福祉国家の再編過程を、「労働」の意味づけをめぐる言説の対抗と関連づけて考察した。今日のフランスでは、(1)「労働の中心性」を保持しつつ労働規制緩和を推進する勢力、(2)労使交渉と労働時間削減による「参入」およびワークシェアリング政策を推進する勢力、(3)「労働の中心性」を相対化し、賃労働以外の社会活動への給付を拡大しようとする勢力の間に、規範的・政治的対抗軸が生まれている(研究成果の論文「労働の再定義」)。また、二つのシンポジウムにおいて、フランス福祉国家の再編過程とその思想的背景を分析した報告を行った(研究成果の学会報告「社会的連帯の思想再訪」および「フランス福祉レジームの変容」)。 3 イギリスとの比較 フランスとイギリスの社会的包摂政策の違いを、画国の歴史と「社会」観の相違から説明する報告を行い、論文を執筆した(研究成果の学会報告「社会的包摂の系譜と自由観念の転換」。平成21年度に公刊される共著に所収される予定)。
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