2008 Fiscal Year Annual Research Report
ラテンアメリカにおける貧困削減政策と民主主義-メキシコ・チリ・ブラジルの比較分析
Project/Area Number |
20730098
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
高橋 百合子 Kobe University, 国際協力研究科, 准教授 (30432553)
|
Keywords | 政治学 / 社会政策 / 民主主義 / 貧困削減 / ラテンアメリカ / メキシコ / 説明責任 / 市民社会 |
Research Abstract |
本年度に行った研究は、市民社会アクターによる「社会的説明責任」を求める運動が貧困削減政策の非政治化に与えた影響を、メキシコに焦点を絞って分析し、次のような成果を得ることができた。 1. まず、1994年、2000および2006大統領選挙前に実施させれた、貧困削減政策財源の市町村レベルでの配分に関するデータを用いて統計分析を行った。その結果、(1)1994年の大統領選挙前には、貧困削減政策の財源は受益者の貧困度よりも政治的要因(市長の党派性、政党間競争度)にしたがって分配されていたことから、貧困削減政策は極めて政治化していたこと、および(2)後の大統領選挙時には同政策の財源が選挙目的に利用される度合いは徐々に減少し、2006年選挙時に政治化現象はほとんど見られなかったことが確認された。 2. 米国の大学で研究テーマを共有する研究者と意見交換を行った結果、1994年から2006年の期間に見られた貧困削減政策財源の非政治化は、メキシコで民主主義が進むにつれて市民社会が成熟し、市民社会アクターによる行政府への監視機能が強まった結果であるとの仮説を導くに至った。 3. 「メキシコで1994年から2006年の間に貧困削減政策財源が非政治化したのは、民主化によって活発化した市民社会による監視機能強化の帰結である」との仮説を検証するため、メキシコにおいてインタビューおよび資料収集を目的とする現地調査を行った。その結果、社会開発省は、2006年選挙前、野党議員や市民社会勢力から財源の透明な運用を求める圧力を受け、貧困削減政策が政権党に利用されないように外部評価システムを強める等、財源の配分に政治的介入が行われないために様々な方策を講じたことが明らかになった。さらに、聞き取り調査を行った市民団体は、特に2000年以降、社会政策財源の不正使用に関する監視活動に重点を置くようになったことが明らかになった。
|
Research Products
(1 results)