2010 Fiscal Year Annual Research Report
ラテンアメリカにおける貧困削減政策と民主主義―メキシコ・チリ・ブラジルの比較分析
Project/Area Number |
20730098
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
高橋 百合子 神戸大学, 国際協力研究科, 准教授 (30432553)
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Keywords | 政治学 / 社会政策 / 民主主義 / 貧困削減 / ラテンアメリカ / メキシコ / 説明責任 / 市民社会 |
Research Abstract |
本年度は、前年度に行った研究成果の学会発表、およびチリのChile Solidario政策に焦点を当てて、様々な市民社会アクターが「社会的説明責任」メカニズムを通じて、同国における貧困削減政策の監視を行っていたのかどうかに関する調査を行った。本年度の研究成果は、次の3点にまとめられる。 1.平成22年4月に米国シカゴ市で開催された米国中西部政治学会(MPSA)、および平成23年3月に京都大学で開催された国際シンポジウムにおいて、前年度に実施した研究に関する成果報告を行った。また、同年10月にカナダのトロント市で行われたラテンアメリカ学会(LASA)では、研究課題に密接に関連するセッションの司会および討論者を務め、海外の研究者と意見交換を行った。 2.チリについては現地調査を行わず、昨年度までに入手した資料、およびチリに本部のある国連ラテンアメリカ経済委員会(ECLAC)の貧困削減政策に関する専門家から提供された最新資料を用いて、Chile Solidario政策に関する現状評価を把握した。その結果、(1)チリでは貧困削減政策の政治的利用が問題とされないこと、(2)同国では政府の貧困削減政策における説明責任および透明性の度合いが高いため、市民社会アクターが政府を監視する動機は極めて弱いことが分かった。つまり、チリでは国家機構における水平的説明責任のメカニズムが十分に機能しているため、市民社会アクターによる政府活動の監視の重要度が低いことが明らかになった。 3.これまで行ってきたメキシコ・ブラジル・チリの3カ国の事例を比較分析した結果、どのような条件の下で、「社会的説明責任」を求める市民による活動が貧困削減政策の非政治化を導く上で重要となるのかに関して・より一般的な理論的考察を行うことが、今後、取り組むべき課題として認識された。
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