2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730099
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
施 光恒 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 准教授 (70372753)
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Keywords | 政治学 / 人権教育 / 日本文化 / 公民教育 / 社会科教育 / 多文化主義 / リベラル・ナショナリズム |
Research Abstract |
平成22年度は、一つは、これまでの研究の成果を踏まえて日本の人権教育を行う際の理論的枠組みをさらに深化させた。現在のリベラリズムの理論においては、人権などのりベラルな制度枠組みは、各地域の文化的文脈を考慮しなければならないと同時に、人権の最低限の普遍的要素、ならびに(文化超越性・中立性という伝統的理解とはちがったかたちであるが)公正さという理念にも大いに配慮する必要があることを論じた。また公正さへの配慮の制度的反映のありかたについても明らかにした。 さらに、日本などの非欧米諸国で人権教育を行っていく際には、欧米で定式化された人権概念を「翻訳」していく必要があるが、自由民主主義やその他の近代社会を基礎付ける理念と照らして、「翻訳」の意義を明らかにした。ここでいう「翻訳」とは、外来の理念や制度を、自国の土着の文化的文脈に適合するように変容させていくことを意味する。「翻訳」が行われなければ、その理念や制度は、社会の一部の恵まれた層しか享受できず、広く一般の人々に活用され、大きな影響力をもつものとはならないと論じた。 加えて、本年度は、日本における人権教育の基礎となる人権の価値を説明する論法や手法の考察を深めるために、昨年度までと同様、地方自治体の人権啓発活動や学校教育における人権教育の資料の調査を続け、分析した。それによって昨年度までに一部発表した人権の価値を説明する論法や手法の妥当性を裏付け発展させる作業を行った。具体的には、米国などの欧米と日本とでは、人間の「成長」、あるいは「自律性」の見方が一部異なること、それにともなって人間の不可欠の利益に対する理解も異なり、人権の価値を説明する適切な論法のあり方も相違してくることが明らかになった。また日本の人権啓発活動、人権教育でしばしば用いられる人権作文などの特徴的な手法の意義も「成長」、「自律性」の理念との関わりで明らかにした。
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Research Products
(3 results)