2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730103
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
礒崎 敦仁 Keio University, 法学部, 専任講師 (40453534)
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Keywords | 北朝鮮 / 政治体制 / 金正日 |
Research Abstract |
北朝鮮の金正日体制が自らキーワードと称する「先軍」概念の発生と変質の過程について検証を行い、論文として刊行した。金正日にとってイデオロギーは権力掌握の手段であったが、冷戦崩壊に伴いイデオロギーの役割自体が低下してから、それはスローガンと変わらない存在に成り下がった。しかし、「苦難の行軍」期を経て、「先軍思想」が生み出され、21世紀には行ってからは主体思想に並ぶ指導的指針とされるまでに発展した、という過程を明らかにした。その上で、「先軍思想」の内容はけっして精緻なものではないため、北朝鮮の指導思想は、全体主義の理念型だったものにスルタン主義的傾向が垣間見られるようになったと評価でき、両者の融合型であるともいえる、と結論付けた。この研究を進めるにあたり、韓国及び中国において資料収集と意見交換をいった。研究目的の第一項として掲げだ「「先軍」概念生成、発展の背景について明らかにする」という課題は概ね達成できたと考えている。 金正日が「先軍」を掲げるようになった背景には、「軍が裏切った」というソ連・東欧社会主義の崩壊観がある。1990年代の北朝鮮は体制護持を至上目標としたが、そこにおいては軍のみならず警察組織による社会統制強化された。それについては共編著の一部「統制社会の北朝鮮」として公刊することができた。また、「先軍」時代の北朝鮮における政策変化については、学会発表や論文の公刊という形で想定以上の成果を出す機会に恵まれた。今後は「先軍」を掲げて以降、いかなる体制変化が生じたかが主課題となる。
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Research Products
(5 results)