2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20730103
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
礒崎 敦仁 慶應義塾大学, 法学部, 専任講師 (40453534)
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Keywords | 北朝鮮 / 政治体制 / 金正日 |
Research Abstract |
最終年度にあたる平成22年度は、初年度、第二年度に進めてきた北朝鮮の国防委員会に関する研究を発展させ、他の国家機関、党機関との関係を検証した。より具体的には、金正日体制が党中央委員会よりも国家機関たる国防委員会を「国家の中枢」と位置付けて重視したことについて、「先軍」概念が台頭したこととの関連性を探った。2010年9月には朝鮮労働党代表者会が44年ぶりに開催され、党を中心とした体制への回帰ともとらえうる現象が見受けられた。北朝鮮政治史上に残る事変であったが、十数年来堅持されてきた「先軍」路線の継続も明示され、研究遂行において大きな軌道変更は必要としなかった。 さらに、北朝鮮における「リーダーシップ」の役割について検証を進めた。党代表者会開催に際して金正日総書記の事実上の後継者として金正恩氏が公式化された過程と背景について、北朝鮮公式メディアの報道ぶりと関係者への聞き取り調査の結果を突き合わせる作業を行ない、後継者問題を円滑に解決するためにも現指導者の健在ぶりが誇示されていることを明示した。 また、「先軍」概念生成の発端となったと考えられる1989年前後の国際環境についての検証にも着手した。東欧・ルーマニアのチャウシェスク大統領処刑は、軍部が市民側についてはいけないとの教訓をもたらし、同じ年に発生した中国の天安門事件は、軍部が体制側にあれば市民を鎮圧できるとの相反する教訓をもたらしたと考えられる。当時北朝鮮が抱えていた危機感について、同国の資料及び各種証言等を通じて解明の糸口を掴んだ。 これらの研究結果は、共著や論文として公刊することができた。
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