2008 Fiscal Year Annual Research Report
大正知識人の中国政治体制論と中国観の研究-袁世凱帝制と日本、米国、中国の視座比較
Project/Area Number |
20730110
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Research Institution | Research Institute for Peace and Security. |
Principal Investigator |
鈴木 隆 Research Institute for Peace and Security., その他部局等, 客員研究員 (50446605)
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Keywords | 政治学 / 政治体制論 / 中国 / 中華民国 / 大正 / 知識人 |
Research Abstract |
平成20年度は、論文発表と学会報告(報告論文提出)を行なった。このうち、とくに後者の準備作業を進める中で、今日の中国の政治体制と民主主義に関する政治的言説が、大正初年における中国の「独裁」と「民主」をめぐる言説構造と多くの点で共通性を有することを確認した。その他、これまでの作業を継続して、国内での資料収集も同様に実施した。 また、海外出張として、米国のジョンズ・ホプキンス大学(メリーランド州)において、資料収集を行なった。ここではとくに、同大に所蔵されている「F・J・グッドナウ(Frank Johnson Goodnow)」コレクションを重点的に調査した。同コレクションは、袁世凱帝政論を主唱したとされるグッドナウに関する最も包括的な資料庫であり、当時の中国政府の顧問として、関連する公式文書から私信に至るまでの多くの貴重な資料を収集することができた。 これらの資料の分析から、当時の中国と米国の知識人は、多くの場合、(1)政治体制における民主と集権をゼロ=サム的視点から捉えていたこと、(2)中国独自の政治発展と欧米的民主主義の直接的適用には批判的であったこと、(3)とくに米国知識人の認識枠組みには、当時自国で進展していた革新主義の政治的・知的背景の下、行政国家化への胎動があったこと、などが判明する。こうしたことは、今日の中国の政治体制とそれをめぐる政治的言説と多くの共通性をもっており、中国政治歴史と現代の対話が可能であることを示している。 次年度の北京出張では、これらの成果のうえに、中国側知識人の政治体制論、民主主義観を調査することにより、米国と中国の認識枠組みの共通性と相違点を明らかにすることができよう。
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