2009 Fiscal Year Annual Research Report
大正知識人の中国政治体制論と中国観の研究:袁世凱帝制と日本、米国、中国の視座比較
Project/Area Number |
20730110
|
Research Institution | (財) 平和・安全保障研究所 |
Principal Investigator |
鈴木 隆 Research Institute for Peace and Security., その他部局等, 客員研究員 (50446605)
|
Keywords | 政治学 / 政治体制論 / 中国 / 中華民国 / 大正 / 知識人 |
Research Abstract |
平成21年度は、当初の計画案どおり、中国出張(北京市)を実施した。国家図書館などでの資料調査を通じて、民国初年(1910~18年)の新聞・雑誌等に掲載された中国の政治体制論に関する論文・資料を収集した。これらの多くは、日本では閲覧が困難なものであり、とくに当時の在華英字新聞には貴重な資料が多く含まれ、有益な資料収集を行なった。 同時に、平成20年度の繰越し出張として、米国のジョンズ・ホプキンス大学(メリーランド州など)でも、資料収集を行なった。ここではとくに、同大に所蔵されている「F・J・グッドナウ」コレクションを重点的に調査した。同コレクションは、衷世凱帝政論を提唱したとされるグッドナウに関するきわめて包括的な資料庫であり、当時の中国政府の顧問として関連する公式文書から私信に至るまでの多くの貴重な資料を収集することができた。 これらの資料の分析から、当時の中国と米国の知識人は、多くの場合、(1)政治体制における民主と集権をゼロ=サム的視点から捉えていたこと、(2)中国独自の政治発展と欧米的民主主義の直接的適用には批判的であったこと、(3)とくに米国知識人の認識枠組みには、当時自国で進展していた革新主義の政治的・知的背景の下、行政国家化への胎動があったこと、などが判明する。こうしたことは、今日の中国の政治体制とそれをめぐる政治的言説と多くの共通性をもっており、中国政治歴史と現代の対話が可能であることを示している。
|